最近見たアニメ
・せっかく時間が出来たということでアニメを見ている。特に、見逃していた京アニの作品をチェックしようと、まず『境界の彼方』を見たのだが、これが面白かった。物語としてはありきたりなのだけど、見せ方がちょっと普通じゃない。なんというか、色々な演出トーンが同時に出現しているような感覚というか。世界の運命や自分たちの生死を左右する深刻な問題と、それと並列して、あたかもそれがないかのように何気なく過ぎていく普通の高校生としての日常と、さらに日本的な文脈が蓄積したギャグシーンとか(西尾維新あたりの影響を感じさせる)が融け合うことなく、ごろりと投げ出されている。まあ、そのうちの一つがあるシーンにおいて支配的になるということはよくあるんだけど、一幕が終わるとまたコロッと変わることもあるし、あるいは深刻なシーンでもギャグが忘れず挟まれる。これはキャラクター造形についても言えて、一つ展開が進むたびに、キャラが違う側面を見せたり、役割を変えたり、ということがよくある。いずれにせよ、このような、普通な感じと、深刻な感じが、同居する奇妙なあり方は、素直に読めば主題と関わっているんだろう。世界を滅ぼしかねない存在と、それを監視する立場の人間たち、と言えども、同時に彼らはただの高校生でもあり、ただの友達同士でもあるわけだ。
・情報の省略に独特の面白さがあるというのも、上記の要素と関係しているのかもしれない。びっくりしたのは第一話で、これがほんとに背景説明がほとんどなく本題に入るわけだ。あと、伊波桜まわりも変な印象だ。「虚ろの影」が出てきたところで、彼女が唐突に出現すること自体にまずびっくりするし(最初は、あれは「虚ろの影」の作り出したイメージか何かだと思っていた)、彼女との因縁が予想よりも遥かにあっさりと解決されるあたりも不思議な感触である。じゃあフリクリみたいに前衛的になるのか、と言えばそうでもなく、一見普通に物語を語りしめていくところが猶更奇妙な気がする。
・アニメの技術的な部分には詳しくないからなんとも言えないのだけれど、こういった歪な語り口を支えるスタッフワークも、流石は京アニという底力を感じさせるものだった。キャラクターの身体のパーツの一部を切り取って、適切に、仕草に暗示される感情や、あるいは仕草そのものをフェチっぽく拾っていく構図の決め方も相変わらずお手の物だし、戦闘シーンでの地形・高低差の活かし方も基本ですとばかりにさらりとこなしていく(終盤はちょっと無数の敵を次々と斬っていくというシーンが多くて単調になったと思う)し、虹色がかった戦闘エフェクトも、それ自体を画面に散らばめることを目的としているかのような美麗さで、よくはまっていたと思う。
・そういうことを考えると、第六話はいわゆるお遊び回なんだけど、それだけに『境界の彼方』らしくなく、むしろいつもの京アニらしい、例えば『中二病でも恋がしたい!』の時のような純粋なドタバタコメディに接近しているとも言えるし、一方であの上滑り感とか、メタファーに感じられるそこはかとない気持ち悪さとかが『境界の彼方』らしいとも言えるかもしれない。どちらにせよ、あの茶番のためだけにダンスシーンをあそこまで徹底的に滑らかに動かすなんて、奇形的だなあと思った。
・京アニだと『中二病でも恋がしたい!』一期、二期と、『たまこまーけっと』、『たまこラブストーリー』といった近年の作品が特にその洗練のすごさという点で好きだったけど、『境界の彼方』もいいなあと思いました。これも近年の作品か。
・続いてこれも見逃していた京アニの作品、ということで『甘城ブリリアントパーク』を第三話まで見たんだけど、これはちょっと精彩を欠くという感じで、どうにもつまらなかった。三話までだと、単なる、生々しい時事ニュースの再現のように思われて、その卑近なところに魅力を感じると言うよりも、むしろ露悪的な部分がきつく感じられたという感触だった。キャラクターの配置が今のところ一義的で動かないところも退屈で、ただこれは話が進まないと判断しにくい部分かもしれない。題材の関係上仕方ないのかもしれないけど、画面が貧しいというのもまた(とはいえ芸術娯楽の分野では、貧しいものが豊かになるという逆転現象はよくあることなのだけど)。
・『寄生獣』は五話まで見て、なんというかこんなに展開速かったっけ? と思った。原作が面白いのでこちらも当然面白い。どの程度同じ話をやるんだろうか。田宮良子の声が田中敦子というのはいかにもだと思った。サブタイトルがすべて書名になっている感じ、嫌いじゃないよ。
・今期だと『ユリ熊嵐』を見ている。細かなイメージやモチーフを配置しつつ、根っこにある性的なエネルギーでとにかくパワフルに突っ走る1、2話がとても好きで、次のカットがまったく読めないところを含めて本当に楽しかったんだけれど、これが3話でかなり普通になってしまって失速し、どうなるかと思ったところ、あの4話で持ち直したという印象。イクニはこれとピングドラムしか見ていないし、どちらかと言えば作家としては苦手なんだけど、あの4話はそんな僕にとってもイクニ的なエッセンスが詰め込まれていて、これはファンの人はたまらないだろうなあと思えた。ピンドラの再演っぽくもあるしね。
・そのあとは見ていないので、これもまた追いつかなければならない。アニメ視聴というのはストイックな行為だ。