ドン・シーゲル『マンハッタン無宿』(1969)

イーストウッド扮するアリゾナの保安官補が、犯罪者の引き渡しのためにニューヨークへと行くという内容である。

まあ緩いシナリオで、田舎者のイーストウッドはニューヨークの人間から「テキサス!」と馬鹿にされたり、被ってる帽子を馬鹿にされたりするわけで、犯罪者の引き渡し任務は延々と邪魔され、女性とのラブシーンはことごとく電話に邪魔され、という具合である。

そんなわけで、いまいち本筋と絡むのか絡まないのか、どうでもよいシーンが並び、脇道をニョキニョキと枝葉が進んで行き、それを楽しむという感じ。同じシーゲルでも『突破口!』なんかは脇道の多い散逸したところが面白い映画だったけど、これもそういった感触。とはいえ、タバコとか、荷物とか、色々なフレーズとか、意外に点と点を繋げるように、演出で個々の出来事を繋げているところはある。

素晴らしいのは何と言っても、ラストでヒロインが着てくる上から下まで真っ赤っかの馬鹿みたいな衣装である。これがとても目立つおかげで、空へと飛び立つヘリコプターから屋上を見る長回しでは、どんどんヒロインが小さくなっていっても、赤い点として残るのである。視覚から逆算された衣装選びというわけだ。しかも、これが作り手の意思としてだけではなく、作中のヒロインが恐らくは「出来るだけ長い間わたしを見ていて欲しい」と思ったからこそあの衣装を選んだんだ、という想像も膨らんでよい。

シーゲルはまだ全然見ていない(5本くらい?)ので、もっと見ていこうと思った。

突破口! [DVD]

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