ジョー・ジョンストン『ロケッティア』

ロケッティア
The Rocketeer
1991年 アメリカ 108分
監督:ジョー・ジョンストン

空機レースでの成功を夢見る若きパイロットであるクリフは、新型飛行機を壊されたためにレースに出場することができず、もっぱら曲芸飛行ショーで生計を立てることになっているところ、ひょんなことからハワード・ヒューズが開発したロケット・パックという背負えば空が飛べる道具を見つけてしまい、ロケッティアというヒーローになる。そんな彼には売れないハリウッド女優のジェニーという恋人がいるが、彼女もまたようやく掴んだ台詞のある役をプロデューサーの姪で酷い大根役者に獲られるなど、悲惨でロマンチックな労働生活を送っているところ、同じ映画に出ていた売れっ子のネヴィル・シンクレアに見初められるが、実はこの男がナチスドイツのスパイで、ロケット・パックを狙っていることが分かり、そこからFBIをも交えた大活劇が繰り広げられることになる。
人公、ヒロイン、悪役を初めとしてあらゆる俳優の顔がディズニーアニメ的な紋切り型を体現しており、そもそも原作がアメコミで、なんだか宮崎アニメのように飛翔と落下に欲望を見せ、反ナチプロパガンダ映画に収束していきつつ、一貫してヒロインのジェニファー・コネリーが豊満な胸の谷間を見せ続けるという、ジョー・ジョンストンの愛すべき古き良きハリウッド映画として片づけるには夾雑物の多い、よくわからない映画ではあるが、どこか人の偏愛を誘うようなところがある。ジョー・ジョンストンは『遠い空の向こうに』や『ジュラシック・パークIII』においても空を飛ぶことに欲望を見せているし、あの愛すべき『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』ではノスタルジーを構成によって活かしている。タイトルバックから飛行機の格納庫を開けるショットに変わり、格納庫が左右に開けられていくにしたがって画面もシネマスコープの横長画面になっていくというお茶目な仕掛けをはじめとして、左右に伸びる横移動をちょくちょく使っていた。