ポール・バーホーベン『ルドガー・ハウアー/危険な愛』

ルトガー・ハウアー/危険な愛
Turks fruit
1973 オランダ 112分
監督:ポール・バーホーベン

ックス狂いの男エリックは、外に出るなり女にちょっかいを出し、すぐに自宅に連れて帰っているハメるという毎日を繰り返していたが、ある日赤毛のモデルと出会い、彼女とのカーセックス及び事故に至る運命的な出会いのあと、足を怪我したまま彼女の家に訪問したはいいがすげなく追い出される。そのあとあれこれあって見事彼女に再会することのできたエリックは、彼女の父親の公認の仲となり、母親の反対もいつの間にかうやむやとなり結婚式を挙げる。するとそれまでの性的奔放ぶりが嘘のようにロマンチックな恋人関係をつづけるエリックの作品が何かしらの賞を受賞して女王陛下の謁見を賜ることになるが、彼女がやたらとはだけた服を着ているせいで乳首が露出し、それを見た会場の責任者が女王の目から彼ら二人を隠し通すことになる。というところまではよかったが二人に好意的だった父親が腐臭を漂わせながら死に、それに嘆き悲しむ母親は新しい男をすぐ見つけたのでエリックは愛想をつかして彼女と二人だけの生活を過ごすが、貧乏に嫌気がさした彼女はすぐに浮気をしてエリックと分かれることになる。その後芸術活動に打ち込むエリックだったが、アメリカ人と結婚する彼女が戻ってきたので食事を一緒にしたところ、愛情が失われていることに気がつくだけであったが、そのまま彼女が難病で入院し、あのセックス狂いが嘘のように真摯なエリックの看病は報われず、彼女は死ぬこととなる。
ゴダールというか、バーホーベン版『勝手にしやがれ』というか、とにかく精液まみれの映画で、主人公とヒロインはやたらと野外で真っ裸になるし、局部も露出しまくる。部屋は淫乱な散逸ぶりだし、ポルノ写真でマスターベーションをする主人公を見た印象は「まるで増村保造みたいだ」というものだった。冒頭でルドガー・ハウアーがハメる女どもとのやりとりには淫乱なアイデアが詰め込まれており、キリスト教関係の仕事で蛆虫を這わせ、自分の男性器を象った絵をそのへんでハメた女に渡し、汚い乳房の女に脱ぐなと指示して陰毛を切り取って口と鼻の隙間に挟んだあとブックレットにコレクションし、インテリ眼鏡女とセックスしていると赤ん坊が泣くので上下運動をしながら揺り篭を手にもってあえぐと赤ん坊が泣き止むのである。運命の相手とのカーセックスでは精液の代わりに窓ガラスを洗浄する水がほとばしり、すぐ後に事故を起こす。女王陛下の謁見を賜った際の作品はすぐに河に捨てるし、その後の作品も彼女との行為を描いたデッサンだったり、プラスチックの半球に詰め込んだキューピー人形をバーナーで焼いたものだだったりとグロテスクである。食事の中に馬の目があるといってレストランを台無しにしたり、彼女の浮気を目撃した食事所ではゲロを吐いたり、バーホーベンは最初からバーホーベンだったのだ。こんな映画なのに陰影はぱっきりしていて、その撮影監督はのちに『スピード』や『ツイスター』を撮るヤン・デ・ポンである。終盤になってやや普通の悲恋に近づくせいかパワーダウンもするが、犬の糞を映したりと諦めは悪い。久々に賭けに勝ったと思わせる掘り出し物だった。Wikipediaによればオランダでは大ヒットしたらしく、不思議な気もするが概ねテンプレな話だし、『セーラー服と機関銃』がヒットした国に住んでいる日本人が文句を言うほどのことでもない。