コリン・トレボロウ『ジュラシック・ワールド』

ジュラシック・ワールド
Jurassic World
2015年 アメリカ 124分
監督:コリン・トレボロ

の悲劇的な事件から20年後、人類は凝りもせず恐竜テーマパークを再建し、それを成功させているのだが、常に新しい刺激を求める客の要望に応えるため2600万ドルかけて新種を生み出すなどの施策を行っており、その新種が例によって例のごとく脱走するので、パークには再び悲劇が訪れることになる。
が割れる冒頭からTレックスの吼えるラストまで、小規模ながら視覚的なアクセントや動きのあるフレーミングを広く全体に散りばめており、2時間飽きずに見ることができる。このあたりは製作総指揮を務めるときのスピルバーグっぽい。会話シーンにも動きがあり、また何気ないところにも小さなアイデアが置かれている。アクションの位置関係はわかりやすく、窓というフレームを介して恐竜と対面し、その「侵入」にこだわるというのは本シリーズに一貫する美点ではないかと思った。猛獣を檻の中に閉じ込めている、という点で最初から勝っているのだと思う。すると人間はむしろ檻に閉じ込められ、恐竜は自由に弱肉強食ぶりを見せつけることになる。クリス・プラットが元海軍の恐竜飼育員を、パークの運営責任者の白衣の美女をブライス・ダラス・ハワードが演じていて、ありがちといえばありがちな人物造形ながら、役者がいかにもそれらしい外見をしているおかげか魅力的だった。騒動に巻き込まれる兄弟はほほえましい。このシリーズは1〜3のいずれもが傑作であり、本作はその最もバランスのよい傑作としてシリーズ第4作にふさわしいものだろう。悪趣味さや粘着質な部分ではスピルバーグの本領からは遠い部分もあるが(特に作家性の爆発した「ロストワールド」と比較すると)、結局のところそのあたりを出過ぎないようにするのが娯楽映画としては功を奏しているように思える。とはいえ、警備部隊は容赦なく殺されていくし、パークのそれとない俗悪さ(存在しなかったハイブリッド種の作成、Tレックスによる牛の捕食を撮影する客など)がいかにもテーマパークっぽくデザインされていて、なおかつ兄弟の付き添いの人を殺すときには「できるだけ楽しく殺そう」というスピルバーグ的な幼稚さも一部再現されている。本作のTレックスはほぼ平成ゴジラといっても過言ではなく、その登場シーンをスローモーションで撮ったことは完全に正しいことのように思われた。ラプトルの猟犬ぶりは楽しく、また盛り上がるし、モササウルスが随所でユーモラスに漁夫の利を得るのもいい。バックオフィス人間と現場人間の融和も、兄弟の和解も素朴に感動したし、彼らが自動車の運転という職業的運動を共有するところなんか素晴らしい。正直、怪獣バトルすら昨今珍しいので、本作のすばらしい怪獣バトル映画ぶりには童心にかえったようにわくわくしてしまった。傑作だと思うし、擁護したい。しかしながら、常に新しい刺激を求める客には、「1作目の衝撃には及ばない」などと言われているようで、娯楽というのは難しいものだと思った。