北村龍平『ミッドナイト・ミート・トレイン』

ミッドナイト・ミート・トレイン
The Midnight Meat Train
2008年 アメリカ 98分
監督:北村龍平

ブロイド紙に写真を売るレオン。その恋人のマヤは、画商のジャーギスを通してやり手の女性画商スーザン・ホフと会うことになったと言い、2人は警察無線の盗聴や特ダネ写真とおさらばできると喜ぶのだが、レオンの写真はスーザンにお眼鏡には叶わなかった。より決定的瞬間を求めて夜のNYを徘徊するレオンは、ついに悪漢に襲われる女性の写真を撮ることができたのだが、助けたはずの女性が行方不明になったことを新聞記事で知る。写真を現像していたレオンは、その日電車に乗っていた指輪をした男が、別の写真に映っていることに気がつく。
人公が助けた女性が電車に駆け込むと、ドアを掴む手のアップが飛び込むように入ってくる。閉じるスライド式ドアではないが、編集によって、閉じるスライド式ドアのような有無を言わせぬ死のメタファーになっている。スライド式ドアはSF映画における未来の表象だが、同時に『悪魔のいけにえ』で示されたように死のメタファーでもあるのだ。また、ハンマーで叩かれて血が出るだけではなく、首が回転する、ガラスに叩きつけられてひび割れる、といった差をつけることができている。鏡もいたるところで出てくる。吊るした肉の間で追いかけっこをするのは誰もが思いつくだろうが、それを電車の中でもやる、しかも一人身内が吊るされていて事あるごとに付帯的被害を負うというのは笑えた。フラッシュバックの多いMTV的スタイルは同時代から距離を取れていないと感じ、今見ると平凡さに映った。それと、走る電車の内外をグルグルと回る『宇宙戦争』的長回しはカメラの制約が残っていて面白いけど、目玉が飛び出たりするのは作家のイメージしかない(ロマン主義的)のでいまいち。