2014年2月に見た映画

まあ、ここでは素直に書こうと思う。

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詳しい感想は鑑賞メーター
http://video.akahoshitakuya.com/u/79182


『男の敵』ジョン・フォード
『傷だらけの挽歌』ロバート・アルドリッチ
『エレニの旅』テオ・アンゲロプロス
東への道』D.W.グリフィス
『陽気な中尉さん』エルンスト・ルビッチ
『山の音』成瀬巳喜男
『斬る』三隅研次
ラッシュ/プライドと友情ロン・ハワード
『鉄腕ジム』ラオール・ウォルシュ
真夏の方程式』西谷弘
キャプテン・アメリカ ザ・ファースト・アベンジャー』ジョー・ジョンストン



『男の敵』美しい映画だった。

『傷だらけの挽歌』70年代のフィルムのざらつきが好きだ。このギラギラざらざらした画面で、人間はみな大粒の汗を光らせ、目を大きく見開き、ぶるぶる震え、汚らしい服をよれよれにし、とても臭そうだ。禁酒法時代の映画が大好きだ。酒をあおって覚悟を決めて、笑いながらトンプソン機関銃を乱射するギャングママなんかたまらない。

『エレニの旅』170分を100近い回数の長回しだけで構成しているトンデモ映画。段取り臭さを感じるところもあるけれど、この人智を超えた神の視点を位置取れるのはアンゲロプロスしかいないだろう。お話は、義理の父親との結婚式を挙げられそうになったエレニという娘が、その義父の息子の子を身ごもったことで結婚式当日に駆け落ちし、義父に追われるところら始まる悲劇……と中々つかみがよい。順位については色々考えたが、何だかんだ170分をここまで見せ切るのは尋常ではないと思いこの位置に。

東への道ドゥルーズも泣いたというあの『散り行く花』と同じく、大メロドラマ。現代の映画はここから、グリフィスから始まったと考えると色々と感慨深いが、これは映画に命を賭けることが許されていた時代の作品だということが最後に分かる。最後は、割れた氷に乗って滝へと流れていくリリアン・ギッシュバーセルメスが追いかける文字通り命賭けのラストミニッツレスキュー。氷が割れて流されることで、「世界から見放された」ことが視覚化されている。

『陽気な中尉さん』原題はThe Smiling Lieutenant。文字通り中尉さんが笑うことでお話が進む。田舎者を笑う映画と言えば残酷だが、今風にちょろいヒロインを巡るラブコメと言ってしまってもいいかも。親父も同様にちょろいのでこれは血筋だと分かる。そんなちょろい父娘と中尉が、笑ったり泣いたりころころ変わるこのちっとも本当らしくないコメディを支えている。ドアを一度開け閉めするだけで、しかめっ面が笑顔に変わる。心理はよく分からんが、それでいい。そういうルビッチにしか作れない映画だ。

『山の音』川端康成原作らしい。とはいえなんとなく小津っぽい作品。つーか父娘の関係が『晩春』。自転車に乗る原節子まである。誰もが指摘するところだろうが、鼻血をタオルで押さえながら目を閉じている原節子がすごくエロい。

『斬る』三隅研次は実験好きなんですよね。人間が真っ二つになります。

ラッシュ/プライドと友情早速、今年のベスト10候補。ロン・ハワードと言えば『ダヴィンチ・コード』と『天使と悪魔』しか観たことなかった。まあ確かに『アポロ13』とか、『ビューティフル・マインド』とか、有名作のある監督とはいえ、雇われ仕事と察する二作が普通だったせいで舐めていたところがあったが、これには驚いた。雇われ仕事でもこれの十分の一くらいの力を出して下さい……。実話のせいか、結構断片的な作りで、レースもハイライトだけ抜き出した感じ。ノリ切れなかったところもあるので一年かけてボチボチ考えていくつもり。

『鉄腕ジム』一見するとジムの成功譚なのだが、豊富な野次馬描写を見るに、「殴りあう二人の男を村中で観に行く」というのどかな野次馬根性が、ジムの兄弟喧嘩からヘビー級タイトルマッチにまで通底していて、そこらへんがやっぱりアイルランド系だぜラオール・ウォルシュ、という感想。ジョン・フォードの『静かなる男』と同じ。テンポも良いし、だれが見ても楽しめる娯楽作という趣き。

真夏の方程式これだけ映画にしにくい題材を、ここまで映画にしてしまえる西谷弘。いや、色々ほんと良く出来てるなあと思うので、ワナビ的にはオススメ。勉強になる。

キャプテン・アメリカ ザ・ファースト・アベンジャー』フィクション=プロパガンダ=夢であることを自覚的に取り込んでおり、往年のアメリカ万歳アクション映画に捧げられたオマージュが悉く楽しく、ラストが切ない。アベンジャーズヒーローものでは一番好き。特殊な才能がなくても面白いものを作れるシステムが出来ているという、この映画の面白さそのものさえアメリカ的。合成丸わかりのカットがこの映画だと美点に変わる。