2014年3月に見た映画

詳しい感想は鑑賞メーター
http://video.akahoshitakuya.com/u/79182


『デジャヴ』トニー・スコット
泥棒成金アルフレッド・ヒッチコック
去年マリエンバートでアラン・レネ
『黒の超特急』増村保造
デリンジャージョン・ミリアス
遠い空の向こうにジョー・ジョンストン
現金に手を出すなジャック・ベッケル
『SUPER8』J.J.エイブラムス
スティーラーズウェイン・クラマー
マチェーテ・キルズ』ロバート・ロドリゲス
ヒッチコックサーシャ・ガヴァシ


『デジャヴ』 これをヒッチコックアラン・レネの下に置けば、自分は懐古趣味になる。しかしもうトニー・スコットさえこの世にいない。

泥棒成金傑作! グレース・ケリーのファッションショー映画。グレース・ケリーヒッチコックにしか許されない何か。ブルーレイで見ることを全力でオススメする。目が楽しいとはこのこと!

去年マリエンバートで鑑賞メーターに書いた通り、意図を汲むこと自体はそれほど難しくはない。細部の解釈はかなり面倒くさそうだけど。……延々と続く複層構造の回想が、相互侵入しているような感じがあって、ループものというか、過去が現在を貫いて噴出してくる感じがとても良い。順位はヒッチコックや増村と悩んだ。

『黒の超特急』ごく一般的な話として、白黒映像に古臭さを感じる場合と、非現実的なリアリティを感じる場合とがある。本来、人間の見ている世界は白黒ではないし、映画のように四角くもない。そこに人物の少なさと、完璧に決めた構図の徹底性(何らかの方針がありそうだが、これは何回か観ないと言語化出来ないだろうと思う)が加わると、「ノワール」という、この世ならざる世界を現出するわけだが、探してみると「勝手に視やがれ」という(その界隈では有名な)サイトがこの映画の分析を行っていた。

デリンジャージョン・ミリアスは生涯この処女作を超える作品を撮ることが出来なかったとされる傑作。暴力描写の過激さと、脇役の死に際のセンチメンタリズムが見どころ。ハリー・ディーン・スタントンが好きな人は必見。ちなみに『パブリック・エネミーズ』とのアプローチの違いを楽しむ鑑賞もアリ。

遠い空の向こうにこれで泣かない馬鹿がいるのか。もちろん、泣くのはもっと馬鹿なのだが……という決まり文句で褒めちぎりたい作品。『キャプテン・アメリカ ザ・ファースト・アベンジャー』にしろ、『ジュラシック・パークⅢ』にしろ、大きく取り上げられることは無いものの、ジョー・ジョンストン監督は好きだ。

現金に手を出すな引退間近のギャングの哀愁漂う一作。繰り返し流れるハーモニカのテーマが忘れがたい。ジャック・ベッケル十八番の男女平等平手打ちは、今回も見れます。

『SUPER8』エイブラムスっていうか、どう見てもスピルバーグだよね。しかも最高のスピルバーグ。夕焼けの光に、自転車に乗る少年ってだけでもう涙が出る。自分がスピルバーグ世代だということを嫌でも思い知らされる体験。2回目だけど。

スティーラーズ裸の女ゾンビ軍団、エルビス・プレスリーのパチモンと言った言葉に食指を動かされる人は見ても損は無いし、ボンクラ向けだと思う。蓮實重彦が時評で褒めていたのを覚えていて借りたのだが、確かに面白い。『ロック・ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』よりも『パルプ・フィクション』に近い。つまり、断片が全体のために組織されているというよりは、全体の構造を利用して断片をばら撒いているという印象。面白いのは断片。

マチェーテ・キルズ』実はロドリゲスはペラペラのスペクタクル性とか、アイデアの博覧会染みた感じが好きになれないのだが(それが一つのスタイルであり戦略であることは認める)、それでもまあここまで映画館で興奮することは昨今稀なのは確か。OPがピーク。

ヒッチコック文句はそれこそ無数にあるわけだが、ヘレン・ミレンの着替えシーンと、ホプキンス扮するヒッチコックが意外と良かったので取りあえず時間分楽しめた。『サイコ』先行上映に立ち会って、あの有名なシャワーシーンの件で会場後ろに忍び、館内から漏れ出る悲鳴に合わせて、清掃員の横で包丁を振り下ろす仕草を反復させるヒッチコックの姿には、一人の創作者として最高にたぎる瞬間を見せてくれてありがとうと言いたい。このヒッチはフィクションであり、アンソニー・ホプキンスでしかないとはいえ、巨匠だって自分のようなワナビだって芯のところは一緒なのだという事を見せてくれる作品には、ワナビはいつだって弱いのである。