2015年上半期 お家で見た映画ベスト10

1.サラ・ポーリーテイク・ディス・ワルツ』116分
2.デヴィット・クローネンバーグ『スキャナーズ』103分
3.小津安二郎『浮草』119分
4.イエジー・スコリモフスキ『ムーンライティング』97分
5.デヴィット・フィンチャー『ゾディアック』157分
6.ウィル・グラック『ANNIE/アニー』118分
7.クリント・イーストウッド『ブロンコ・ビリー』117分
8.増村保造『氾濫』97分
9.ケリー・ライヒャルト『ナイト・スリーパーズ ダム爆破計画』112分
10.ダスティン・ランス・ブラックバージニア その町の秘密 』111分


新作に、あまりこう「これを薦めたい!」という作品がなかったので、お家で見る映画をオススメすることにしました。
(最近、映画館の画面が暗くて、正直のところ行きたくなくなりつつある)

新作で一番面白いと思ったのはワイズマンの『ナショナル・ギャラリー』かなあ。180分あるのを立ち見で鑑賞しても退屈しなかったし……。でもワイズマンの中ではそこまで、という感じの作品らしい。恐るべきはワイズマン。TSUTAYAの発掘良品に並んでくれ。


テイク・ディス・ワルツ』はもうサラ・ポーリーとしても「撮った」のではなく「撮れてしまった」作品なんじゃないかと思う。それくらいの作品で、今期見た映画では断トツでこれが一位だった。色々と褒めるところはあるんだけど、語るには時間と体力がない。本当はこういう作品を言葉に置き換えることこそ、映画批評の役割なんだろうけどね。

スキャナーズ』はもう今更という感じで申し訳ないけど、クローネンバーグの中でも一番好きかもしれない。『ヒストリー・オブ・バイオレンス』や『イグジステンズ』がお気に入りなのだが、どれを一番に置くのかは悩ましい。説明一切なしで超能力者が殺し合うのが、いかにも情報不足の諜報戦という感じでもあるし、とにかく映像と演出のテンションが高く、人体破壊のテクスチャーがちょっと見たことがないもので、これは傑作だろう。

『浮草』は画面がエロくて、セリフが歌のようで、映画ってそれだけでいいんだと思った。

『ムーンライティング』。とにかく色んなことが唐突に起こって、色んなものが壊される。出稼ぎ労働者の不安や焦燥感、抑圧された性欲などが画面の各所ではじけます。

『ゾディアック』。しばらくフィンチャー祭りをやってたけど、結局これと『ゴーン・ガール』がフィンチャーのベストかなと思った。ともかく、謎解きや資料調べにはまっている時のあのランナーズハイ的な心地よい弛緩した時間についての映画なんだと思う。『ドラゴン・タトゥーの女』とかでは無駄なカットを積み重ねる傾向もあった気がするけど、本作では長いスパンの歴史をたった2時間半で語るフィンチャーのバランス感覚に感服した。ジェイク・ギレンホール視点だとハッピーエンドの映画なので、落ち込んだ時に見ると勇気づけられる。「落ち着けよダーティハリー

『ANNIE/アニー』。魔法をかけて、踊りたいときにどうぞ。

『ブロンコ・ビリー』はワイルド・ウエスト・ショーをやりながら全米をドサ回りしている劇団の話なんだけど、とてもよかった。まず、なんていったって最初はロングで撮られていた劇団のみんなの舞台が、最後は接写で描かれるというのが感動的じゃないですか。好みという意味ではイーストウッドでも随一かもしれないと思った。フィクションに耽溺することは、現実逃避なのではなく、本当の人生を生きることだと教えてくれる作品。

『氾濫』。本音を喋らせたら人間というのはロクなことを喋らないわけですが、ここまで淡泊かつ露悪的に押し通すとどこか爽やかさみたいなものが滲み出てきて、本音で喋るというのは気持ちのよいことだなあという気分にもなってくる。それがとにかくメデタイ方向に出たのが『最高殊勲夫人』だろうけど、不気味な迫力という点ではこちらでしょうか。カメラの後退運動がこわい。

『ナイト・スリーパーズ ダム爆破計画』。冒頭しばらくの映画監督との質疑応答で図式が示される親切設計。「大きな計画」を重要視する主人公たちと、「いくつもの小さな計画」を重要視するリアリストの監督。以降は、その「大きな計画」の卑小さと、計画によって生じた、カメラにすら映らない出来事の心理的な大きさ(その事故を卑小なものだと切り捨てることは、自分たちの計画の卑小さを認めるのに等しい)がゆっくり内破していく、地獄のような構成。サスペンスの時間はあっても成就せず、カメラは決定的なことを避ける。世界と切り離されている感触を味わいたい人に。日曜日の朝に見るといい感じに脳細胞が発酵していく。『いのちの食べかた』でもちょっと似たような体験ができるかも。

バージニア その町の秘密』。ガス・ヴァン・サント製作総指揮につられて見たけど、よかった。小さなアメリカの田舎町の支配者と、その不倫相手で統合失調症の女性がメインになって回る話かと思いきや、その女性の息子さんの青春ドラマが主軸になっていて心地よく裏切られた。視覚的に色彩豊かな青春映画という趣きで、そこに悲惨な話と、どこかアメリカ文学のように奇妙な細部が挟まるという感じ。正直寝ぼけながら見たので確証は持てないけど、たぶんなかなかおすすめなはずです。



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