マックG『ザ・ベビーシッター』

ザ・ベビーシッター
The Babysitter
2017年 アメリカ 85分
監督:マックG

伸びしたい時期なのに、注射が苦手で、クモがこわくて、美人のベビーシッターまでつけられているから学校ではいじめられている男の子が、両親不在のある日そのベビーシッターが夜にしでかしている大変なできごとを目撃してしまう。
初のほうはかなり辟易としたけど、85分という短さでホラーコメディを撮るマックGはとても生き生きとしている。学校の場面では、主人公とその仲のいい女の子以外はスローモーションになっていたり、たびたびフランケンハイマーの『セコンド』のような移動する役者にカメラをくっつけた撮影などが出てきて、正直その効果がいまいちよくわからなかったりもするのだが、総じて無駄なくかっちりできている。ベビーシッターが悪魔崇拝集団の一味であることはあらすじの時点でネタバレしているのだけど、それを明かすカットのインパクトが強いのであらすじを知っていても驚いた。短さゆえに時間稼ぎは一切なくシナリオが進行し、通報を受けた警察はやたらと到着が遅れることもなくばっちり登場し、そのあともぐいぐい進んでいく。悪魔崇拝集団のメンバーは一応は一般市民のはずなのにキャラがおかしく、非常事態にどうでもいい話で騒ぎ立てる黒人、殺しに躊躇のないゴス女、意識の高いイケメンマッチョサイコパス、どう見ても童貞のメガネ、そしてチアリーダー、という具合に揃っている。「プッシー」と罵倒されていた少年はシナリオを通じてトラウマを解消し、出てきた要素を無駄なく消化している。作中人物がファイナルディスティネーション級の偶然で凄惨な死を迎える本作だが、少年の奮闘に着目すると「ホーム・アローン」になるわけだし(実際言及がある)、図らずも双方の共通項を発見してしまう。
ベビーシッターから逃げ回ったあと女の子とキスする場面は、まだ危機から脱していないはずなのにダラダラと叙情的なシーンを続けていて、それ自体の出来はともかくとして、前後のサスペンスとのつながりが切れていて弛緩している。