生産性向上という名の奢侈
- デスクツアーというものがある。自室のデスク環境を静止画や動画で撮影したもので、そこに音声や文字での解説が加えられる(YouTube動画やブログ記事であったりする)そして、しばしば使われている製品の紹介がついている。
- デスクといっても現代社会なので実質的にはそのままPC周りの環境を指していることが多い。中央にはウルトラワイドモニターがあり(モニターアームに掴まれている)、示し合わせたように電動昇降デスクがあり、HHKBなどのメカニカルキーボードが中央に鎮座する。
- 例:「理想の書斎づくり」YouTuber
- 検索するといくらでも出てくる。
- 勘違いを避けるために付言すると、自分はこういった記事や動画が好きだ。よく見るし、参考にして商品を買うことがある。
- 自分自身、インテリアや文房具、ガジェットの類を見るのが好きだし、そもそも本好きとして書斎を整えることについて愛着があるわけだが、こういった記事や動画(の特定ジャンル)には奇妙な共通点がある。それは「生産性向上」が謳い文句として出てくることが多いことだ。
- なるほど確かにガジェットに投資することで生産性が向上することはある。
- 例えば、PCについては厳然たるスペックの壁があって、そもそも一種の作業をできるか、できないかがスペックで決まる。3Dゲームをしたいなら相応のグラボを積む必要がある。
- 3DCG制作をするなら更なるスペックが要求される。ソフトウェアエンジニアやデザイナーが使うPCなら、一定の要求スペックというものがある。
- もちろん、そういった仕事や用途が直近の予定になくとも、(一般に)PCは頻繁に買い替えるものではないのでスペックは高いに越したことない。気が向いたときに新作のゲームがPCでできるとか、機械学習をいっちょ試してみるとか、といった予定の変更に対応できる汎用性を持たせておくことは大切だ。少なくとも後悔することが少ない。
- モニターの大きさも致命的なほど作業効率に直結するし、デスクの奥行きや横幅は他のすべてに影響するため妥協することはできない。また毎月仕事・プライベートで数万字を書く人間にとってノートPCのキーボードをそのまま使うのは耐え難いだろう。そして単純に、マウスの親指ボタンでブラウザバックできないと耐えられない体に自分はなってしまった。
- だがそのために数万円するキーボードや、1万円以上するマウスが必要なのか? こういったことを考え始めると際限がない。
- 「生産性向上」と言いつつ、商品の見た目に言及するケースがある。確かに所有感の有無や、「見た目で気分がアガる」ことを否定するものではないが、そういうことを言うなら必ずしも「生産性」をお題目に据える必要はないのでは。
- 自分自身そういうものが好きなので、以下のように言い聞かせている。
- 「生産性向上」の効果測定をすることは難しい。
- 「生産性」ではなく自己満足、顕示的な目的での消費だと割り切った方がいい。
- 奢侈だと自嘲せよ。
- 仕事は生産性よりもアウトプット(結果)で評価すべきだ。
- 使っているのがお金で、プライベートの話に留まるなら何も言うべきではないのかもしれない。そういう意味ではデスクツアー的な動画に言うことは何もない。
- しかし、それが思想やノウハウ、一種のツールで、自分の仕事や考え方に影響しているなら、評価はシビアに結果で測られるべきだと言い聞かせるほうがいいだろう。