エドワード・ズウィック『ラブ&ドラッグ』

ラブ&ドラッグ
Love and Other Drugs
2010年 アメリカ 112分
監督:エドワード・ズウィック

っとしない電化製品をご機嫌に売りまくっていくチャラ男のセールスマンが店長のガールフレンドと業務中に寝たところ、少々おいたが過ぎたということで解雇され、家族会議の結果として、事業に成功したデブでオタクの弟の提案から、製薬会社のセールスマンに鞍替えすることになる。どう考えても倫理的に問題のあるファイザー製薬社の研修を乗り越えたチャラ男は、得意の話術で病院にひたすら営業トークを仕掛けていくし、受付嬢と寝たりもするのだが、強力なライバルがいるためノルマを果たせないでいる。そんなときに若年性パーキンソン病患者のマギーと出会ったチャラ男は、チャラ男らしからぬ調子でマギーに言い寄って、持病のために深い関係になることを恐れる彼女の心を次第に勝ち取っていくことになる。マギーとの恋愛模様と並行するように薬品のセールスを進め、上司や医者や医者狙いの美女と関係を深めていったり、派手なグラマー美女の妻に家を放り出された弟が転がり込んできて奇妙な同棲生活を続けたりするが、あと一歩ライバルに及ばないというところで、バイアグラの営業担当者となることで一躍トップに躍り出る。ニュースにも取り上げられ、このあたりだけ少し実話風味のにおいが出てくる。しかし、パーキンソン病患者の集会に出たマギーが他の闘病仲間を見て勇気づけられるのとは対照的に、傍で支え続けた老人の忠告にダメージを受け、パーキンソン病の治療法を捜し求めてマギーを連れまわし出したチャラ男に、とうとうマギーが別れを告げることになる。その後、キャリアを順調に重ねるチャラ男だが、マギーのことが忘れられず、ある日そのきっかけがやってくることになる。
頭、ジェイク・ギレンホールがラジカセを肩にしょって踊りながらセールスをしている場面で、「エドワード・ズウィックもやけくそになったか」「こういう題材は向いていないのでは」などと思っていると、そのままあれよあれよとテンポよく進んでいって気がつけば目が離せなくなっていた。テンポと小ネタの量は重要なのだ。とはいえ、運動神経がある程度よくないとこういうことはできないだろうとも思う。あと、自分では絶対にやりたくないが、アコギな商売の話というのは面白い、ということだろう。醒めた人間が段々のぼせていくという自分が好きなタイプのラブコメになっていて、闘病ものとアコギな成功譚という一見相性がよいとも思えない実話がベースではあるが、基本的にはオーソドックスにまとまっている。実話らしさというのもそこまで出ていない。エドワード・ズウィックといえば戦争映画に強い映画監督で、説話のバランスがよく、全体的にとても器用だという評価で見ていたが、ここまでコテコテのラブコメができるとは思っていなかった。終盤の決めどころでは、いくらなんでもそこまでやらなくていいだろう、というくらいに男女のクローズアップの切り返しを連発しており、ラブコメを見るときについ思ってしまう「臭すぎるだろ」という感想がつい出てきてしまい、まるでラブコメ専門の人がやっているかのようなジャンルへの迫り方だなあと思った。悪い意味ではなく、むしろいい意味で驚かされた。