『リコリス・リコイル』が面白い

  • リコリス・リコイル』を三話まで見た。もともと二話まで見ていたのを、先日プライムビデオに三話が追加されたので見たという具合だ。

    ここのところプライムビデオで映画やドラマ、アニメを15分くらい見ては挫折するという、映画の限界効用にぶち当たったんじゃないかという砂漠状態だったんだが、リコリコは見れている。

    本作は明るい『GUNSLINGER GIRL』とでもいうようなアニメで、美少女が銃を携帯して治安維持のために人を殺しまくるというもの(もっともメイン2人のうち一人が非殺傷弾を使うのであまり血生臭くはなっていない)。

    正直一、二話は様子見という感じだったんだけど、三話はすごくよかった。

    一見してわかるのは、バディものの二人が絆を獲得する回で、シナリオ、モチーフ、コンテ上に対比が敷き詰められているということだ。

    それは例えば、二組のバディ、二組の”元バディ”、DAに戻れない(戻らない)二人のリコリスといった要素レベルの話もあるし。行きの雨天と、帰りの夕陽。ボードゲームへの不参加と、参加。拒否される飴と、受け取られる飴といった演出の話もある。

    また、噴水の前で本音をぶつけあう千束とたきなの切り返しのショット。

    そして、二人の絆を確かなものにする感情芝居は、全身でたきなを抱き上げてくるくると回り、二人の主観ショットを切り返すというものだ。それも「抱き合っているよ」という周囲の陰口に対抗するように抱き上げるのもいいし、噴水という反射物を背景に置くのも特別感がある。水、回転、重力、どれも恋に近しいモチーフで、場面に感情が強く焼きついている。

    個人的に、一~二話を見ている段階では千束のひょうきんな演技はどこか全体から浮いていて、居心地の悪さを覚えていた。いくらそれ自体が芸として面白くても、突出していておさまりが悪いのだ。

    それが今回、フキというハスキーで口の悪い、派手な芝居をする演者が入ってきてうまく収まったように見えた。フキと(たきなの後任の)新人が二人とも口が悪く、容赦なく煽ってくるし、千束も売り言葉に買い言葉の応酬を続けるので、観客としてテンションが上がってきて終盤の模擬戦がとても盛り上がるのだ。「殴れ殴れ!」という気持ちになる。

    一方で説明を必要最小限にして、少ないやりとりの中からフキが実はたきなや千束のことを気遣っていること、なんやかんや憎めないやつであることをほのめかすことができている。フキが、憎まれるためだけに作られた悪役ではないとわかる。また作品の雰囲気が陰惨になり過ぎないし、一方で湿っぽくもならない、すごくいいバランスだと思った。

    またフキと千束のキャラクターとしての特徴がほぼ真逆というのもいい。フキは表層上シンプルな芝居なんだけど、内面が複雑というキャラクターで、演技内演技ができる。一方の千束は、表層上の演技はころころと変わって複雑なんだけど(だからそれ単独で芸になる)、本人は演技できないタイプであり単純な人間であることが説明されている。この二人の演技合戦がいい具合に拮抗した三話だった。 (中盤の「これが電波塔っスか」「これって言うな」(巻き舌)、「いや、ただのアホだ」という芝居とか好きです)。

    こういった芝居合戦のなかで、楠木司令が千束の特殊能力について語ったあと「しかしそれ以外は、生意気なクソガキだ」と嬉しそうに含み笑いしながら言う芝居が挟まってくるのも、ひとつの〆としていい(彼女と千束の関係も当然、複雑なのだろう)